規則違反企業には年間売上高の最大6%の罰金

EUがデジタルサービス法に合意、コンテンツ監視の義務化など

メディアビジネス編集部

欧州議会は423日、欧州連合(EU)加盟国の間で「デジタルサービス法(DSA)」について合意したことを発表した。世界の巨大IT企業に対し、プラットフォーム上の違法コンテンツの取り締まり強化を求めるもので、違反した場合は重い罰金を科す。

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ターゲティング広告の一部禁止などを盛り込む

違法なコンテンツへの迅速な対処や、未成年者に対するターゲティング広告の禁止、ユーザが意図しない不利な行動に巧みに誘導する「ダークパターン」を禁ずることなどが定められており、早ければ2024年に施行される。

もし規則に反した場合、年間売上高の最大6%の罰金を科せられる。月間アクティブユーザー数が4500万人未満のEU企業は免除されることから、対象はGoogleを傘下に置くAlphabetMetaといった米大手IT企業が中心になるとみられる。

DSAでプラットフォームの運営企業に求める主な義務は以下の通り。

  • デジタルプラットフォームにおける違法なコンテンツの普及、基本的な権利への悪影響、民主的プロセスや公安に影響を与えるサービスの操作、性暴力、未成年への悪影響などといった、プラットフォーム上のリスクに対する低減を目的とした継続的な監視

  • ダークパターンの禁止

  • レコメンダシステムの透明性

  • ロシアによるウクライナ侵攻のような危機的状況に対応するためのメカニズムの導入

  • EU法で規定されている未成年者の個人情報を利用したターゲティング広告の掲載禁止

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長は「DSAは、EUにおけるすべてのオンラインサービスの基本規則を改善するもので、これによりオンライン環境が安全な空間であり続け、表現の自由とデジタルビジネスの機会を保護できる。DSAは『オフラインで違法なものはオンラインでも違法であるべき』という原則を実現するものだ。規模が大きくなればなるほど、デジタルプラットフォームの責任も大きくなる」と述べている。

また、欧州委員会の競争担当委員であるマルグレーテ・ベスタガー(Margrethe Vestager)氏は、「プラットフォームは、コンテンツの適正化に関する決定を透明化し、危険な偽情報が広まるのを防ぎ、安全ではない製品がマーケットプレイスに提供されるのを回避する必要がある」とのコメントを発表した。

3月に成立したDMAとともに巨大IT企業を規制

3月24日には、EU加盟国と欧州議会が新規制案「デジタル市場法(DMA)」について暫定合意に達した。DMAは規模に関係なくすべてのデジタル企業に公平な競争の場を確保することを掲げており、いわゆる「ゲートキーパー」と呼ばれる巨大プラットフォーム企業に対し、自社サービスや製品を優先したり、収集した個人データを別のサービスで再利用したりすることなどを禁じている。

もし規則に反した場合は、全世界の売上高の最大10%の罰金が科せられ、違反を繰り返した場合、全世界の売上高の最大20%に引き上げられる。

同発表の詳細はこちらで確認できる(英語)。

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メディアビジネス編集部

出版社や新聞社などのメディア事業者、製造業や小売業などのオウンドメディアを運営する企業向けに、総合コンサルティングサービス「MediaDX」の提供、システム構築、メディア運用など、事業立案からグロース・多角化戦略まで幅広く支援している。
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