オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所(英国)が1月7日、「Journalism, media, and technology trends and predictions 2021」と題した調査リポートを公開した。
これは2020年12月に、イギリスやドイツなど欧米を中心とした43カ国の編集長やCEO、CDOなどメディア企業の役職者にオンラインで調査を行い234人から得られた回答を集計したもの。回答者の内訳は半数以上(57%)が紙媒体のバックグラウンドを持ち、次に放送関係者(22%)、デジタルメディア出身者(15%)と続く。
収入源への注目度はサブスクが広告を逆転
デジタル収益源で重要なものを選ぶという質問では、76%が「定期購読(サブスクリプション)」(76%)を挙げており、次に「ディスプレイ広告」(66%)と「ネイティブ広告」(61%)という結果になった。同リポートによると、同じ質問をした前回(2018年)よりサブスクリプションへの注目度が高まり、広告への注目度が低くなっているという。また、商業出版社は平均して4つの異なる収益源を今年重要/非常に重要であると挙げたデータも出ており、多様化がいかに重要になっているかを示していると分析している。
プラットフォームからの資金分配について見解割れる
Googleニュースショーケースの例に代表されるように、2021年はプラットフォームから一部の出版社のニュースコンテンツに対し多額の資金が提供される見込みだが、今回のアンケートでプラットフォームからの支払い分配について聞いたところ、ほぼ半数(48%)はごく一部であっても「質の高い」ニュースコンテンツを提供する出版社が受け取るべきだと考えており、約3分の1(32%)がほとんどの出版社に使用料が支払われる可能性のある「量」に基づくべきだと回答。プラットフォームとの付き合い方について、各出版社の見解がまだ大きく異なっていることが明らかになった。
AIに期待するも、恩恵を受けるのは大規模企業という懸念
今後5年間で理解を深める上で最も重要になるテクノロジーについては、3分の2以上(69%)の回答者が「AI」を選び、「5G」(18%)や「新しいデバイス/インターフェイス」(9%)を大きく引き離している。同リポートでは、メディア企業は機械学習(ML)や自然言語生成(NLG)および音声認識などのAI技術を活用して、新しい記事や顧客の発見、制作のスピードアップそして配信の改善に役立てようとしていると言及。よりパーソナライズされた体験を提供し、制作効率を向上させる方法としてAIに賭けていると報告している。
一方で、回答者の65%がAIの恩恵を受けるのは大規模な出版社だと考えており、同リポートでは「多くの小規模な報道機関は、長期的な研究開発に投資したりデータサイエンティストにお金を払ったりする資金がなく、取り残されることを恐れている」と危惧している。
リポートをまとめた同研究所の上位研究員であるニック・ニューマン(Nic Newman)氏は、BBCニュース・ウェブサイトの創設メンバーで、2012年から毎年発行されている「Digital News Report」の主執筆者。
リポートの詳細は同研究所のウェブサイトで確認でき、無料でダウンロードできる。