2020年グローバル広告市場、約1割減少　2021年は紙媒体など苦戦か

英国のマーケティング会社WARCが2020年11月30日、世界の広告費を分析・予測したレポートを公開した。

 世界規模で約1割の広告費減、メディア市場は2021年プラス予想

「WARC Global Advertising Trends: State of The Industry 2020／21」と題されたレポートによると、2020年の広告費は全世界で5573億ドル（推定値・以下同・と前年比10.2％の減少、「メディアと出版」市場の広告投資も4.6％減（659億ドル）と予測されている。しかし2021年には世界規模で8.4％増となり初めて700億ドルを突破、プラスに転じる数少ない分野だと報告している。

（図）分野ごとのデータ

紙媒体は軒並み大幅減少、2021年も状況は変わらず

媒体ごとにみると、際立った振り幅を見せているのは「映画」。2020年は約半減と苦戦しているが、2021年は41.2％増で１年の成長を牽引すると予測している。 「新聞」は25.5％マイナスの98億ドルと「40年以上で最悪の業績」と同リポートで言及、同じく4分の1以上（25.4％）の減少を記録した「雑誌」（40億ドル）とともに2021年度も改善の見込み薄と、紙媒体には厳しい数値が突きつけられた。

 成長著しいオンライン広告分野、回復の兆しも下落傾向のTVやOHH

市場全体の成長は、オンライン広告分野の成長にけん引されていることが同データで浮き彫りになった。 「ソーシャルメディア」は、COVID-19の影響を受けながらも2020年の広告投資は9.3％増（983億ドル）と拡大。2021年は12.2％増とさらに成長を加速させて市場規模を1103億ドルに押し上げ、広告費全体のほぼ5分の1（18.6％）を占めると見込まれている。

また、「最も急成長しているフォーマットになる」と期待されているのが「オンライン動画」で2020年は7.9％（527億ドル）増加、さらも2021年には12.8％の大幅アップを予想。

「検索広告」については、2020年にわずかに減少（1.9％）するも、2021年に7.0％の成長が見込まれており市場規模は1306億ドルに達すると予測。これは広告費全体の5分の1に相当する。

一方で、従来の主要メディアである「テレビ」の広告費は16.1％マイナスと大きくダウン、2021年は盛り返すもわずか1.1％の増加にとどまると分析。市場規模も2019年に比べて15.2％縮小すると見込まれている。

同リポートで「2021年に2番目に急成長する媒体」だと期待を寄せているのがOOH（屋外広告）で、 2021年の広告費が2割（20.2％）増と大きくジャンプアップすると予測。ただし、総額でみると2019年比12.7％減（363億ドル）と、減少に転じていることも明らかになった。

（図）媒体ごとのデータ

同リポートについて、WARCのデータコンテンツ部門の責任者でありリポートの著者であるジェームズ・マクドナルド（James McDonald）氏は「Eコマースやソーシャル・プロパティなどの一部のプラットフォームは比較的無傷で立ち上がったが、メディアの大部分は深刻な影響を目の当たりにしている」と述べている。

レポートの詳細は同社ウェブサイト（英語）に記載されており、WARC Dataの定期購読者は無料でレポート「WARC Global Advertising Trends」をダウンロードできる。

WARCは英、米、シンガポール、中国を拠点に活動する企業で2018年より、企業間情報を提供するアセンシャル（英国）の一部となった。