音声アプリやメタバースはさておき2022年はサブスク戦略を重視

世界のメディアはデジタル広告により半数以上が収益増 ロイター調査

メディアビジネス編集部

オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所が1月10日、「Journalism, media, and technology trends and predictions 2022(ジャーナリズム、メディアと技術のトレンドと予測」と題したレポートを公開。出版社の8割近くが、サブスクまたは会員制戦略を2022年の最優先事項とする意向であることが明らかになった。

半数以上がデジタル広告により収益増と回答、MUVは下降ぎみ

1年前と比べて社全体の収益が「増加した」と回答した人の割合は全体の半数以上(59%)、「減少した」との回答は8%にとどまった。より多くの読者がオンラインで購入するようになったため、デジタル広告が活況を呈し、購読料収入も増加したと報告している。

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一方で、半数以上(54%)がページビューは横ばい、または減少していると回答。以下のグラフで示されるように、イギリスでは2020年後半に比べMUV(月間ユニークビジター)の数値は下降傾向にあり、アメリカも同じ状況だ。

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サブスク獲得がデジタル収益の主流に、新規購読者を維持するポイントは?

2022年のデジタル収益における優先事項を選ぶ質問では、回答メディアの79%が「サブスク」を選択。これは2年前に最優先事項だと考えられていたディスプレイ広告(73%)より上回る。ネイティブ広告(59%)やイベント(40%)は2020年に比べて大きく数値を下げた。

同レポートでは2022年の動向予想として「製品の拡張とバンドル販売による購読疲労への対策」を挙げており、「パンデミック期間中に獲得した新規ユーザーを維持したい多くのメディアにとって重要なポイントになる」と述べている。特に景気が悪化した場合、値下げや価格差による対応が考えられる一方、新たなプレミアム商品を開発してサブスクを促進しようとするメディアが出てくると言及。その一例として挙げられているのが米New York Timesだ。

同社は、クロスワードや料理アプリの成功などで定期購読者を増やしてきた。さらに製品レビューサイト「Wirecutter」を有料に移行し、これまで無料だったメルマガをサブスク契約者のみに提供するようになった。同メディアの定期購読者数840万人のうち760万人はデジタル読者であり、2025年までに1,000万人獲得を目指している。

鍵になるのはウェブサイト、アプリ、メルマガ、ポッドキャスト

また、有料のポッドキャストやオーディオブックをバンドル販売することを検討しているメディアもいると言及。「広告に力を入れるメディアもあれば、サブスクに力を入れるメディアもあるが、どちらのモデルも最終的にはウェブサイト、アプリ、メルマガ、ポッドキャストを通じてユーザーとより深く関わることが成功の鍵になる」と同レポートでは分析している。

視聴者に向けたイノベーションという点では、今年最も力を入れるのは「ポッドキャストやその他のデジタルオーディオ(80%)」という回答が最も多い。次いで「メルマガ(70%)」、「デジタルビデオフォーマット(63%)」となっている。ちなみに、「音声アプリケーション(14%)」や「メタバース(8%)」など、まだ成熟していない技術を含む分野は後回しにされるだろうと予想している。

同レポートではまた、2020年に米Huffpost社を買収し2021年にデジタルライフスタイル出版社のComplexを買収した米BuzzFeed社を例に挙げ、M&Aの活発化も予測している。

調査は2021年11月21日から12月20日にかけて、52カ国246人のメディア関係者へのクローズドアンケートで実施。回答者の内訳は、編集長級が57%、CEO/COOが37%でデジタルベースのメディアも含まれている。

同レポートはこちらからダウンロードできる。

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出版社や新聞社などのメディア事業者、製造業や小売業などのオウンドメディアを運営する企業向けに、総合コンサルティングサービス「MediaDX」の提供、システム構築、メディア運用など、事業立案からグロース・多角化戦略まで幅広く支援している。
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