英The Institute of Practitioners in Advertising(IPA)が2月9日、最新の「TouchPoints」の調査結果を「Making sense:The commercial media landscape(3rd Edition)」と題したレポートにまとめたと発表した。
2020年の英国成人6000人を対象に調査した同レポートでは、ロックダウン下の生活に至るまでの英国の商業メディア環境の変化を考察。IPAのシニアリサーチ&マーケティングマネージャーであるサイモン・フレージャー(Simon Frazier)氏は、ロックダウン前のデータを通じて2020年の商業メディアの成長予測と衰退の軌跡が見られるように、同調査では広告を購入可能なメディアにのみ焦点を当てていると説明している。
同レポートでは3つの期間のメディア行動を3つの年齢層に分けて比較・分析しているが、ロックダウン下にあった2020年の英国でメディア習慣の多様化が進んだ結果、世代間の類似度が急激に低下したことがわかった。
高齢層では依然利用率が高いTV、若年層では利用増加が著しいスマホ
英国のロックダウン下での商業メディアへの接触時間を年代別・デバイスごとにみてみると、「16〜34歳」においてはデジタルデバイス(スマートフォン、タブレット、PCやラップトップ)が70%を占めており、その割合は5年前より増加している。スマートフォンの接触時間は5年前と比較して33%から55%へ増加した。
一方「55歳以上」では、従来型メディア(TV、ラジオ、印刷物)で過ごす割合は79%と全体の約4分の3を占めている。この割合は5年前からほぼ変わっておらず、むしろPCやタブレットの割合は徐々に減少していることがデータで示されている。このうちTVの接触時間は5割を超える。
全年代へ高いリーチ率を誇る「OOH」、急進する「オンライン動画」
全年代を対象にしたメディアごとの週次リーチで最大の伸びを示したのは「オンライン動画(Other Online Video)」(11%増)で、過去5年間でどのチャンネルよりも最も大きなジャンプアップを遂げた。特に若年層(16〜34歳)においては、2020年のロックダウン下において初めて「録画/ライブTV」を超えたというデータも出ている。
しかし、ロックダウン前の「OOH」を超えるリーチが可能なメディアはないことがわかった。2015年から2020年初頭まで、OOHは全年代の成人に対する最大のリーチメディア(96%)だった。当然のことながらロックダウン時は大幅に減少したが、それでも「録画/ライブTV」に次ぐ数値(78%)を示している。
ターゲットに応じた広告配信チャネルの選定がカギに
「メディアチャネルの優位性が強化され、その違いが悪化したことは間違いない」と言及。このような状況の細分化により、単一の商業チャンネルがすべての視聴者に包括的なリーチを提供する能力は著しく低下していると分析。「ワンサイズ・フィット・オール」のメディア・アプローチは以前よりも効果的でない可能性が高いため、「ブランド構築を成功させるには、デジタルと非デジタルのミックスが必要だ」と指摘している。
IPAは1917年に創立された英国の広告代理店をサポートする専門機関で王立憲章(Royal Charter)により法人化されている。同リポートは、IPAのウェブサイト(英語)にてダウンロードできる。