消費者庁がステマ検討会開催、規制も視野に

「なぜ広告と書く必要が?」ステマ広告を望む広告主の実態明らかに

メディアビジネス編集部

消費者庁が916日、ステルスマーケティング(ステマ)に関する検討会の資料を公開。ステマでの広告を望む広告主や、広告と明記することに疑問を抱く広告主がいる実態が明らかになった。

今の景品表示法では、ステマを規制できない

現状の景品表示法において、表示内容に優良誤認・有利誤認がない場合は、ステマを規制することができないのが実情だ。同資料によると、広告代理店やPR会社へのステマに関するヒアリングでは、ステマが公に行われている現況を裏付けるかのように、以下のような意見が寄せられている。

・広告主の中には「ステマは法律で規制されていないため、ステマを行っても問題ない」とする広告主もいれば、「世の中の案件は全て広告案件なのに、なぜ広告と書く必要があるのか」という意識の者もいる。(広告代理店・PR会社)

・広告主からのステマに関する依頼を断ると、広告主の中には 「他の広告代理店では受けてもらえた」と納得してもらえないこともあるなど、インターネット広告業界にステマが横行しているのが現状。(広告代理店)

インフルエンサーの4割以上が、広告主からのステマ依頼経験あり

売上を伸ばすための合法的なマーケティング手法であるとして、ブローカーが広告主に対して不正レビューの投稿を持ちかけたり、ブローカーが広告主に対してコンサルティングを行うふりをして広告主に隠して不正レビューを行ったりするケースもあると言及。「口コミを用いたプロモーションをしたいという広告主からの依頼は、ほとんどインターネット分野である。その中でも化粧品・美容・健康・デジタルガジェット業界の企業が多い」(広告代理店)という意見も出ている。

現役のインフルエンサー300人への調査では、広告主からステマを依頼された経験を持つ人の割合は約4割。依頼を受けた人のうち実際に受けたことがある人の割合は半数近く(44.7%)に上る(「全て受けた」「一部、受けたことがある」の合計)。

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OECD加盟国のうち、日本のみステマ規制がない

ステマは広告主などが消費者に宣伝と気付かれないように宣伝する行為を指すが、企業があたかも第三者が表示しているかのように誤認させる「なりすまし型」や、インフルエンサーなど第三者に金銭の支払いなどを提供して表示している事実を伝えない「利益提供秘匿型」がある。

消費者庁の資料によると、OECD加盟国(米・英・独・仏・伊・加・韓・豪)において、ステマに対する規制がないのは日本のみ。制度面では日本の消費者だけがステマにさらされている現状があり、実際にグローバルな事業者が日本の消費者に対してのみ、ステルスマーケティングを行った事例も存在するのではないかと言われている。ただし、ステマは広告であることを隠して行われるため、「消費者相談の現場でステマに関する相談は聞いたことがない」(消費者団体)という。消費者自身がステマを受けたかどうかがわからないため、実際の被害を把握することが難しいからだ。

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今後は企業などへのヒアリングや検討会を重ね、2022年内に報告書を取りまとめる方針だ。

同発表の詳細はこちら。同日に開催された第1回会合資料では、ステマの実態調査結果やインフルエンサーへのアンケート結果なども公開されている。

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出版社や新聞社などのメディア事業者、製造業や小売業などのオウンドメディアを運営する企業向けに、総合コンサルティングサービス「MediaDX」の提供、システム構築、メディア運用など、事業立案からグロース・多角化戦略まで幅広く支援している。
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