オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所は4月22日、「Listening to what trust in news means to users(ユーザーにとってのニュースの信頼性を聞く)」と題したレポートを公開した。
同レポートによると、報道機関への信頼は、ブランドの持つ歴史やなじみ深さ、文体や見た目に影響される傾向があり、報道機関の編集基準はあまり関係ないという分析結果が明らかになった。
昔から知っているメディアのニュースを信頼する傾向
同レポートは前述の分析結果を「そのブランドに対しオフラインでの評判やなじみがあると、オンラインでのニュースコンテンツに対しても同様の考えを築くことはよくある」とまとめている。
レポートのために行われた一連のグループディスカッションやインタビューでは、信頼の話をしているはずなのに、そのメディアに対する好き嫌いといった一般的な印象につながることが多く、結果として「信頼できる」ニュースソースと「単に好感が持てる」ニュースソースの境界が曖昧になった。
また、複数のインタビュー参加者が、幼少時代に家族が読んでいた出版物を信頼する傾向があると回答。情報源への信頼性や信頼度の判断は、読者自身が持つ過去の経験やブランドに対する印象に影響されていることがわかった。
ニュースへの信頼度はメディアの見た目に影響される
同レポートではまた、報道機関の編集プロセスや編集基準、報道慣行(journalistic practices)が、読者が信頼度を考慮する際の要となることはめったにないことが判明した。
むしろ多くの人は、ニュースの文体や品質といったより具体的で理解しやすい(more tangible)感覚に影響される傾向があると分析している。
たとえば、個別インタビューに協力したイギリスの23歳女性は「ポップアップがたくさん出てきたり、多数の写真が出てごちゃついたりしているウェブサイトのニュースはあまり信用しない。見た目に高級感がないと信用しない傾向がある」と答えている。
ニュースメディアへの懐疑と諦めの念を抱いている人が多数
どの国でも、信頼できるジャーナリズムに関連する価値として、ニュース報道における客観性、公平性、バランスを挙げている。しかし、ニュースがさまざまな勢力によって「コントロール」されているという考えから「どのニュースソースも正確な情報を提供してくれるとは思えない」という懐疑と諦めの念を抱いている人が少なくないことも明らかになった。
同レポートは、ニュースに対する信頼性を研究する取り組みを拡大・深化させる目的で2021年1月〜2月の間、英、米、ブラジルおよびインドの4カ国の成人132人に対しインターネットでのグループディスカッション、および一部の参加者への個人インタビューを実施した内容をまとめたもの。調査結果を見る際には、この調査だけでは統計的一般化はできないと同レポートでも伝えていることに留意されたい。
同レポートの詳細は、同研究所ウェブサイト(英語)にて確認できる。