児童書、語学・学習参考書、雑誌などは「電子書籍に向かない」という判断も

電子書籍が増えないジャンル、その理由 経産省の調査レポート

メディアビジネス編集部

経済産業省は5月21日、「読書バリアフリー環境に向けた電子書籍市場の拡大等に関する調査」の報告書を公表した。

2019年度以降に「電子書籍を出版した」と回答したのは63.0%(87社)。従業員数別にみると、従業員数が多いほど電子書籍を出版した割合が高い。

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電子書籍化が進んでいないジャンルは「児童」「語学・学参」「雑誌」

2019年度に電子書籍を出版した企業について、主に刊行している出版ジャンルのうち「電子化が進んでいない」と回答した割合が最も高いのは「児童」(35.0%)。続いて「語学・学参」(33.3%)、「雑誌」(28.6%)という結果だった。

電子化が進んでいない理由として、「製作費用の問題、製作に掛かる時間的問題。そもそもの需要があるか把握できていない」(語学・学参)、「制作フロー、許諾の問題。記事・写真等の権利者が多く、権利処理が困難なため」(雑誌)という声が挙がった。「絵本は電子に適さないと判断しているため」(児童)といったジャンルの特性に依る意見も出たが、コストや権利処理の負担が共通の理由として浮き彫りになった。

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電子書籍、進まない原因は「採算」や「許諾」など

これから刊行する紙の書籍については、全企業の約半数(44.9%)が「基本的に電子化する」意向を示している。 電子書籍の出版を増やすことの課題として、「電子書籍の購入者が少ない」(44.9%)、「採算が望めない」(37.0%)といった採算上の課題や、「著作権者の許諾を得るための業務負担が大きい」(42.0%)、「図版等の利用許諾を得る負担が大きい」(40.6%)といった著作権関係の負担が課題となっている。報告書では「電子書籍の出版がなかった企業では、製作体制やフローの構築も課題」だと指摘している。

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一方、今後刊行する紙の書籍を電子化しない理由を尋ねたところ、半数が「出版物のジャンル・内容が適さない」(50.0%)と回答。次いで4割以上が「著作権者の意向」(40.5%)と答えているが、電子書籍出版実施企業では7割以上(70.8%)と顕著に多いことが明らかになった。

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同調査は、経済産業省の委託事業「令和2年度コンテンツ海外展開促進事業(電子書籍市場の拡大等に関する調査)」として、読書バリアフリー法(視覚障害者等の読者環境の整備の推進に関する法律)で求められている電子書籍等の制作や販売およびテキストデータ提供の促進について、全国の出版社に対しアンケートおよびヒアリング調査、海外調査が行われた。2020年11月10日~12月24日に郵送で実施、有効回答数は138件(有効回答率34.6%)だった。

同調査の報告書は、経済産業省のウェブサイトからダウンロードできる。

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出版社や新聞社などのメディア事業者、製造業や小売業などのオウンドメディアを運営する企業向けに、総合コンサルティングサービス「MediaDX」の提供、システム構築、メディア運用など、事業立案からグロース・多角化戦略まで幅広く支援している。
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