収入の過半数は印刷物による収益、短期的な景況感は悪化

世界の出版社の優先投資分野、購読収入より製品開発や研究開発に

メディアビジネス編集部

世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)が929日、「World Press Trends 2022-2023」調査結果の一部を発表。購読料や広告よりも、製品開発や研究開発の方が重要課題だと考えている出版社が多いことがわかった。

スペインのサラゴサで開催された「World News Media Congress 2022」にて明らかにした。調査では、インフレの上昇や景気後退の可能性、ウクライナでの戦争の継続により、ニュース出版業界の短期的な景況感は悪化しており、ニュース出版社の半数以上(55.4%)が、来年度の事業見通しについて悲観的であると回答。一方で、2022年の収益成長率は平均10%と伸長方向であり、発展途上国を中心に将来に対して「かなり強気な姿勢の」メディアもいるという。

新しい収入への投資が実を結び始めている

デジタル読者収入(16.0%)とデジタル広告(10.3%)は、2桁の伸びを続けているが、最大の成長分野は「他の収入源(21.5%)」。同調査では「出版社はここ数年、収益構造の多様化のために多額の投資を行っており、こうした投資が今、実を結んでいるようだ」と分析。新たな収益源の中でも、出版社は特に重要な活動としてイベントに注目している。

 投資先については、88%の出版社が「製品開発と研究開発」が最重要課題であると回答。これは購読料や広告(各84%)をわずかだが上回る。

技術投資の主な分野は「データ分析」で、「動画」や「オーディオ・ポッドキャスト」「CRM・顧客管理」が続く。これについてWAN-IFRAのインサイトディレクター兼編集長のディーン・ローパー(Dean Roper)氏は「持続可能なビジネスの最も重要な基盤は、出版社が視聴者や消費者と築く関係であり、その中心は包括的なデータ戦略、特にファーストパーティデータであることがますます明らかになってきている」と述べている。

従来の収入源である印刷物は依然として重要

印刷物の収益は減少または停滞しているが、今でも世界の大手出版社グループにとって中心的な収益源であることに変わりはない。現在、出版社の収入の過半数を占めており、今後12か月間についても、収入の大半は広告(40.9%)と購読料(32.8%)であると回答している。

 

同発表でローバー氏は、「今後1年間、そして2023年に向けて、ほとんどの業界が厳しい状況が続くと予想していることは周知の事実であり、ニュース業界も例外ではない。例えば、エネルギーコストの上昇は、印刷や流通のコストに影響を与え続けるだろう」と述べている。

WAN-IFRAは、約3,000のニュース出版社とテクノロジー企業からなる国際組織で、ジャーナリストと出版社の権利を守るために1948年に創立。「World News Media Congress」は世界80か国以上からニュースメディアのリーダーが参加するイベントで、1948年より開催されている。

World Press Trends2022-2023」はWAN-IFRAの研究プロジェクトで、20227月から9月にかけて実施され、62か国から167人のニュース担当幹部が参加。「World Press Trends」の完全版レポートは年末に発行される予定。

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出版社や新聞社などのメディア事業者、製造業や小売業などのオウンドメディアを運営する企業向けに、総合コンサルティングサービス「MediaDX」の提供、システム構築、メディア運用など、事業立案からグロース・多角化戦略まで幅広く支援している。
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