米の地方紙シカゴ・サンタイムズ(Chicago Sun-Times)が10月6日、Webニュースのペイウォール廃止を発表した。
ペイウォールの代わりに寄付ベースの会員プログラムを設立
メールアドレスを登録すれば、無料でWebサイト上のニュースが読めるようにする。同社はペイウォールの代わりに、寄付ベースのデジタルメンバーシップ・プログラムを立ち上げ、読者からの支援を呼びかけている。デジタルメンバーシップ・プログラムへの参加方法は2つで、読者に創設メンバー(Founding Member)になってサポートしてもらうか、地域社会がひとつになった瞬間やコミュニティーで見逃しているポイントなど、読者自身に200〜400ワードで情報を提供してもらう方法だ。また、ハッシュタグ「#CSTforall」をつけて、ソーシャルメディアでストーリーをシェアすることも呼びかけている。1か月5ドルから参加できる創設メンバーになると、オリジナルのノベルティやメンバーシップ・イベントに参加できる。
同紙は自身の一連の行動について「大胆な試みだ」と表現。「インフレや景気後退が予想され、私たちのような地方紙がさらに危機にさらされる可能性がある」と指摘する一方で、「メンバーシップ・プログラムは、私たちの収益モデルとコミュニティーへの貢献度をより密接に結びつけるものであり、読者への説明責任を果たすものだ」と述べている。
無料でコンテンツが閲覧できるChicago Sun-Times紙のWebサイト
米国では毎週2紙のペースで廃刊に追い込まれているという研究結果
シカゴ・サンタイムズ紙は「Chicago Sun」と「Daily Times」が1948年に合併して創設、8回のピュリッツァー賞受賞歴があるシカゴで最も古い日刊紙。2022年1月にChicago Public Mediaの傘下に入り、非営利のローカルニュースメディアとして活動している。
発表の中で同紙は、米ノースウエスタン大学のメディル・ジャーナリズム・スクール(Medill School of Journalism)の6月のレポートをもとに、米国の地方紙が置かれている現実を伝えている。2019年後半から2022年5月の間に、米国全体で360紙が廃刊。2005年以降では全米の新聞の4分の1が廃刊に追い込まれており、これは毎週2紙のペースだ。同期間に、シカゴ・サンタイムズ紙が本社を置くイリノイ州はどの州よりも多くの新聞社が閉鎖されているという。新聞社で働く従業員の数も、2006年以降70%減少した。
同紙はこの結果について、「ローカルニュースが本当に大切なものであることを示している」と言及。地域社会に関する報道がなくなることで、汚職や公害、貧困が増え、投票率が下がることを懸念する同社は、「シカゴ地域のすべての人が、経済力に関係なく、私たちが制作するニュースや特集、調査にアクセスできるべきだと強く信じている」と決意表明している。
同発表の詳細はこちらで確認できる(英語)。