公益財団法人出版科学研究所(東京都新宿区)が1月25日、2022年の日本国内における出版市場を発表。書籍や雑誌を合わせた紙の出版物の推定販売金額は1兆1292億円と、前年比6.5%マイナスだったことがわかった。
紙と電子を合算した出版市場は1兆6305億円(同2.6%減)だった。マイナス成長を記録したのは4年ぶり。
雑誌は約1割の大幅減少、書籍も規模は縮小傾向
書籍は前年比4.5%減(6497億円)、雑誌は同9.1%減(4795億円)と、いずれもマイナス成長を記録。書店店頭の実勢は、この数字よりさらに厳しいとみられる。
書籍は、好調だった文芸書、児童書や学参、資格試験などの売れ行きが鈍化。2022年に最も売れた書籍である「80歳の壁」(和田秀樹・幻冬社)でも発行部数が60万部弱と、規模が縮小傾向にあることや、ヒット本がシニア層頼みになっていることなどが懸念材料として挙げられている。雑誌は、月刊誌(コミックス、ムック含む)が前年比9.7%減(4017億円)、週刊誌は同5.7%減(778億円)だった。月刊誌の大幅なマイナスは、 コミックスが前年比二桁減と大きく落ち込んだことが要因だと考えられる。
紙の出版市場と電子出版市場合計
電子出版は7.5%増、プラス成長も伸び率縮小
電子出版市場だけを見ると、前年より7.5%増(5013億円)とプラス成長が続いている。なかでも電子コミックは4479億円と前年比8.9%増と堅調に成長を重ねているが、電子書籍は同0.7%減(446億円)、電子雑誌は同11.1%減(88億円)と落ち込んだ。
2014年の統計開始から8年で、約4.4倍の市場に成長したデジタル出版。出版市場における占有率はついに3割を超えた(30.7%)。2021年まで2割前後の成長ペースで規模を拡大してきたが、2022年の伸び幅は大きく縮小。順調だった成長率にブレーキがかかった格好だ。同研究所は、価格に敏感な読者は複数のストアを回遊する傾向が強いとされるデジタル出版において、今後はより体力のあるストアが勝ち残っていくと分析する。
2022年の出版市場が、4年ぶりに前年割れを記録した理由として、過去2年間の出版市場を支えてきたコロナ特需の終息、物価高によって趣味・娯楽品である出版物への買い控えが発生したことが挙げられている。
同発表の詳細はこちらから確認できる。なお、同レポートが掲載された「出版月報」は4月より季刊化され、年4回の発行になる。