オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所(英国)が6月15日、「2022 Digital News Report」を発行。日本は有料オンライン・ニュースへのハードルが高い国のひとつであり、朝一番のニュースをTVで観る人が多い、独自の文化を持つユニークな国であることが明らかになった。また、国際的にニュースを選択的に回避するトレンドが浮かんできた。
多くの国でサブスク契約は大手全国紙に集中
日本で2021年に有料のオンライン・ニュースを利用した人の割合は10%で、これは世界平均(17%)を大きく下回る。ニュースサイトに新規登録した人の割合は14%で世界平均(28%)と比較すると半分に過ぎず、調査対象地域内で最も低い数値だ。
世界でみるとコロナ禍の中でデジタル購読者数や収益を押し上げたメディアもあるが、その裏にはサブスクリプションの恩恵が大手全国紙に集中しているという現実もある。例えば米国では、サブスクリプション購読者の約半数がNew York Times、Washington Post、Wall Street Journalの3誌に占められているという。
ニュースへのアクセス方法、TVシェアが高いのは日本特有
朝一番ニュースへのアクセス方法は今やスマートフォンであり、その傾向が過去3年間で大幅に高まっているのが世界のトレンドだ。一方、日本で圧倒的なシェアを見せているのがTVで、同レポートでは「日本の高齢者人口が、このようなトレンドに逆らっている理由かもしれない」と分析。ただし、ニュースをスマートフォンで見る人の割合は日本でも増えてきているというデータも示されている。
若年層のニュースの情報源はソーシャルメディアに移行?
世界的にソーシャルネイティブ世代は、ニュースソースとしてのウェブサイトやアプリとのつながりが弱まっているという傾向も明らかになった。ソーシャルネイティブ(18〜24歳)の39%は、ニュースの主な情報源としてソーシャルメディアを使うが、これは直接ウェブサイトにアクセスする人の割合より高い(34%)。
同リポートでは、他の世代よりもソーシャルメディアやアグリゲーターサイト、検索エンジンなどの「サイドドア」ソースを使用してニュースにアクセスする可能性がはるかに高いと指摘。今後の世界動向として、「アプリやウェブサイトへの直接アクセスは時間の経過とともに重要性が低下し、ソーシャルメディアはその遍在性と利便性もあってさらに重要になっていく」と述べている。ちなみに、強力なアグリゲーターや検索エンジンを通してニュースにアクセスする傾向が強い国として日本と韓国が挙げられており、これがオンラインニュースへの課金が容易ではない理由ではないかと分析している。
ニュースを意図的に避ける傾向が世界的に強まる
「ニュースを頻繁に(あるいは時々)避ける」と答えた人の割合は、世界全体で約10人に4人(38%)と、2017年(29%)から増加した。日本は14%と低い方だが2017年と比較すると2倍増で、その流れは明らかだ。ニュースを避ける理由として半数近く(43%)の人が「政治やCOVID-19の話題が多すぎる」ことを挙げており、「ニュースは信頼できない、バイアスがかかっている」と考えている人も29%いる。
「多くのパブリッシャーは、2021年は比較的順調に収益を伸ばしたが、今後の成長には、インフレとエネルギー価格の上昇の影響が重なり、現在ニュースメディアに費やしている家計が圧迫され、広告収入にも打撃が及ぶ可能性がある」と同レポート。特定のオーディエンスのニーズを満たし、ユーザーにとっての価値を示すことに、より一層注力する必要があると述べている。
同レポートは、日本を含む世界46の国と地域の93,432人のオンライン・ニュース購読者を対象に、2022年の1月から2月にかけて実施されたオンライン・アンケート調査をもとにまとめられた。リポートの詳細は同研究所のウェブサイトで確認でき、無料でダウンロードできる。